磁器の制作 「釉薬ソフト」-すくも窯での基礎的な磁器の制作手法

【 ぜーゲル計算シート「釉式」 】

ゼーゲル式の算出方法は難しいものではありませんが釉薬試験片を作るたび毎回同じような計算を繰り返すのは煩わしいものです。私はテストピースの調合計算用にExcelを利用しています。

初期は筆記計算でした。Windows95で初めて表計算ソフトを知りこんなに便利なものが在るのかと驚きました。

当初はゼーゲル式算出のみでデータの保存機能も無くプリントしたデータをテストピースの台紙裏に貼っていました。

無料のゼーゲル式算出の表計算シートは既に何点か公開されています。有料の釉薬ソフトは釉薬データを持つデータベース的なものになって行くと思います。私の物は私の窯専用でテストピース作りの為のものです。VBAで簡易的な保存機能を付加しましたので公開する事にしました。VBAの記述は私の理解出来る範囲の単純なもののみです。

焼き物を造られVBAの知識のある方と何人かで作っていければと思っています。

■ 「釉式」原料調合表の記入方法

原料銘欄をクリックすると原料リストが現れるので必要な原料をダブルクリックし、添加量を記入すればゼーゲル式が算出されるようなっています。

【 線膨張率 】 (2007年10月18日追記)

「釉式」の線膨張率は指数で表示しています。釉組成に対して計算値と実値との関連は調合成分により差があります。E&T値(English and Tuner)が低めでW&S値(Winkelmann & Schott)が高めの場合が多いようです。貫入の程度を考える時に釉の調合割合やSiO2/Al2O3値と併せ線膨張率も参考にしています。実値とのずれはありますが直感的な値です。又、Al2O3量に対してW&S値とE&T値で現れ方が違います。

Winkelmann & Schott値やEnglish and Tune値はガラスで使用する係数で陶磁器ではそのままの値では使えません。釉薬では気泡・結晶・分相等不均一で全ての釉薬で使用できる係数はありません。

English and Tuner 値は透明釉近辺では計算値を1.2倍した値が実値に近いようです。(すくも窯で使用の釉薬で)

Winkelmann & Schott値は透明釉近辺では計算値を0.8倍すると普通は実値に近く(すくも窯の釉薬で)、釉薬ではなく磁器素地・粘土素地では計算値がそのまま使用できます。

Yuusiki2.00 では釉薬の線膨張率をE&T値の1.2倍で表示し、W&S値は0.8倍で補正し薄く表示しています。ただW&S値とE&T値が大きく離れた時には陶磁器素地成分の時が多くその時は補正なしでW&S値を濃く表示します。(珪石もずれますがこれは外しました)

線膨張率の計算値はガラスで使用する値で陶磁器では大きくずれる時があり注意が必要です。ただ計算値と大きく異なる時、釉薬では気泡・結晶・分相等何らかの大きな不均一が表れているということです

【 マグネシア釉の調合例 】

マグネシア釉の調合例

上図のAnal%は生原料の分析値%で灼滅分を加えていないので100%になりません。呼び出した原料に対し適当な値を入力すればAnal%は原料の成分分析値を表示します。

下図でAl2O3モルピッチの指定欄の赤の0.05数値を選ぶと上のマグネシア釉の調合を基にAL2O3を0.05モルピッチ、Si2O3を0.5モルピッチで増加させ色分けしたカオリンー硅石の調合表が算出されます。更に対応するAl2O3-Si2O3性状図と簡易的な光沢透明域が描かれます。

■ カオリン-硅石調合表

カオリン-珪石調合-重量比

上図で例えばC3の位置の調合は硅石20.06 カオリン13.63 となります。下図で左下の黒丸「A0」が「マグネシア釉の調合例」で算出したAl2O3-SiO2値

水色の破線は「加藤悦三著 釉調合の基本 P71」マグネシア釉の光沢透明域を参考に修正したもの。下図で「光沢透明域の調整」にチェックを入れ、現れた入力表に数値を記入して光沢透明域の線を描くようになっています。値は保存出来、釉のアルカリ配分に応じ利用します。

「光沢透明域の調整」のチェックを外すと「釉式」に組み込まれた値で透明域を実線で描きます。ただあくまでもすくも窯用に作ったもので簡易的な参考値です。現状は組込値の修正は出来ませんが時間があれば修正したいと思います。)

光沢透明域の値は焼成、冷却条件で変わり、例えば私の0.5立米のガス窯ではSK9焼成のMgO-0.44モルの釉ではほとんど現れません。下図破線はあくまでも工業試験場の窯での光沢域データなのです。

一般的には透明域の右下がマットや乳濁、左上がカオリンマット、左下が塩基性釉となります。光沢透明域を一つ記せばおおよそ釉の特性がつかめます。ただ鉄釉等、多彩な表情を持つものでは一つのみ表示するこの方法では対応出来ません。

■ Al2O3-Si2O3性状図

AL2O3-Si2O3 性状図

【 ゼーゲル式を基に原料を調合する 】

ゼーゲル式から原料を調合

 「ゼーゲル式設定」のチェックを入れるとゼーゲル式の設定表が現れますので必要事項を記入すれば原料の調合割合が表示されます。

 ゼーゲル式を算出する為の原料は指定成分ごとに分析表のリストより選びます。設定したゼーゲル式に基づいて指定原料の組合せで原料調合を行います。

 左図は部分ごとに切り取り表示したもので実際の表示位置と異なりますが、原料に柞灰と釜戸長石と朝鮮カオリンを指定し、チェックボックス下部の青欄に表示されるゼーゲル式で調合を求めたもの。

 ゼーゲル式より計算された調合は計算途中で数値の切捨てがあり計算値に誤差が生じます。算出された調合を入力すれば実際のゼーゲル式はSeger欄と白黒の棒グラフと黒丸で確認できますのでゼーゲル設定値の青の棒グラフや数値と比較し再調整出来ます。

 原料の添加量はスピンボタンで連続的に値を変化でき、グラフとゼーゲル式を見ながら更に修正出来ます。

 上記調合では柞灰の分析値は古く現在とはずれがありますが一つの調合の例えです。

【 画像の登録機能 】 (2007年10月18日追記)

画像の登録機能

写真加工ソフトで800X600ピクセル程度に写真を加工し、 bmp、 gif、 jpg、 wmf のいずれかの形式で適当なファイル内に保存します。Yuusiki側では写真の位置データをテキストで保存しリンクします。一つの釉薬に対し5つまで写真を登録できます。私はファイルサイズと写真の質を考え jpgで保存しています。

光沢のある磁器を人工光源でデジタルカメラで撮影し、写真をExcelに取込み更に液晶ディスプレイで見るとモアレが実によく出ます。写真ソフトではこんなことはありません。

ただ光源を自然照明に変えるだけで解決しますのでYuusiki2.00より写真の登録を追加しました。

白い光沢のある磁器写真をExcelに取込む時、自然照明でもモアレが出るならフィルムカメラで撮影して下さい。フィルムの感光素子はランダムに配置されていますのでモアレはまず出ません。

テストピースの写真が釉薬を表すわけではありませんが、小さな写真一つが同系列の釉薬の整理に大変役立つものです。

■ テストピース作り

石灰釉、亜鉛釉、バリウム釉、リチウム釉、マグネシア釉、等の基礎的調合はスポットで作るのでなく上記の様な方法を取るなり、少なくとも2成分、3成分の段階的な調合を行い釉性状図が描けるだけのテストピースをまず作っておきます。窯業地の工業試験所で閲覧出来ますが自分で使う範囲の釉は必ず作ります。釉の表情は窯ごとに異なり参考書等からスポットで調合してもほとんど役に立ちません。時間をかけ作った物に見るべきものが無く徒労であったとしても、自分の窯で釉性状図が描けるだけのテストピースを作る事でしか始まらないのです。

1) 必要とするテストピース個数の「A0」調合を取り分けます。

2) 上図のカオリン-硅石調合表を基に、1)調合にそれぞれ必要分カオリン、硅石を加えふのり、アラビア糊等、適量加え乳鉢で擦り調合します。糊は筆塗りし易いよう、釉に加える時より多めにします。

テストピースへの釉の塗りは厚い処と薄い処を付け釉溜の出るよう形状を考えます。一番良いのは小さな杯ですが釉性状図を見るには不向きです。私は手捻りで小判型の形状にし端を折り曲げ2cm程立てた試験片を使っています。簡単に幾らでも作れますが、手捻りで形がバラバラですので台紙に貼り付けると一寸見苦しいです。型に押し付け同一形状を作るのが良いかもしれません。色釉以外は呉須で線描きしておくと釉の熔け具合が良く判ります。

釉薬乾粉10gで4㎝角程度の試験片3個ほど筆塗り出来ます。手間は変わらないので一つの調合に3~4個作っておき酸化、還元、焼成温度を変えた時、と焚き分けるようにします。

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