磁器の制作-「削り土の処理・土練り」 すくも窯での基礎的な磁器の制作手法

注)動画撮影は:PanasonicLX1/320×240画素/10コマ/秒で撮影
撮影画像をwmvで更に変換しているため画質は落ちています。
Windows Media Playerで再生しますが拡大再生は見づらいです。

【 1 削り土の再生 】

 削り土は天日で良く乾燥させ十分な水に浸けると水中で分解し気泡が良く抜けます。生乾きのままですと土は塊のまま沈み気泡は抜けません。水桶の中に暫く置き上水を捨て沈殿した土を素焼きや石膏の鉢に入れます。塵避け、乾燥斑を避けるためにさらしの布を密着して被せ弱めの天日で乾します。型離れしたら直ぐに引き出しアーチ状にして陰干します。柔らかめの状態で菊練りをして暫く寝かしてから使用します。

 多少の塵、鉄粉が出ますが何回でも再生できます

【 2 篩を通しての磁器削り土の再生 】

 削りで鉄粉や極小の塵の混入を除くには150~180目のステンレスの篩を通します。私は作業が楽なので150目ですが削り土で鉄粉の問題は起きていません。無理やり篩を通さないようにします。柄杓で泥漿を篩に入れ軽く振るえば通る程度の水加減です。

■ 撹拌器の使用

 大きな塊は天日干しし砕きます。それ以外の磁器削り土は削ったら直ぐに水に浸け貯め込みます。天日干しで塵を拾いますし乾いた土の処理では埃が舞います。後で撹拌器を使用するので削り土は乾さずに水に浸けます。ある程度の量になったら両手持ち出来るドリルにステンレス羽の撹拌器を付け泥漿が150目の篩を通るよう十分な水の量で撹拌します。4~5分撹拌して滑らかな泥漿になったら止めます。

 撹拌器の羽は30年前に購入した釉薬撹拌用のものでステンレスの丈夫な作りです。電動ドリルは両手の握りが無いと撹拌で振られ危険です。何れにせよ危険な作業でお勧めはしません。

撹拌器

 撹拌器を使用せず上記1)の方法でも特に問題はありません。丁寧に処理すれば何回でも再生出来ます。篩を通さないので鉄粉、塵が時々出ますが小さな鉄粉は上絵で対処出来ます。

■ 布袋での水切り

 150目のステンレス篩を通した粘土をフィルタープレス機で使用する布で作った袋に入れ、口を縛り吊るして水を切ります。一週間ほどで布から土が剥離したら土を出しアーチ状にして陰干しし、適当な硬さで菊練りし保存します。

布袋は瀬戸市に居た折テント作りの店で作ってもらいました。圧力のかかる事も無いので特にフィルタープレス用の生地でなくても目のつんだ丈夫なテント用の防水されていない生地なら問題ないと思います。布に泥漿を包んで吊るして出てくる水が濁っていなければ使えます。

■ ポリ容器での水切り

 布袋で水切りしない場合は篩を通した粘土を3ヶ月程容器のまま放置し粘土を沈殿させ上水を捨て水切りします。粘土を柄杓で軽く撹拌し後は素焼き鉢に入れ上記1)の方法で処理します。時間はかかりますが布袋に入れ処理するより作業は楽です。

 良く脱泡されていますので仕上がった粘土は小物なら直ぐににロクロ挽きできます。

 私は現在この方法で処理しています。処理が追いつかない時だけ布袋を使用しています。削り土を溜め込み撹拌用の80リットルのポリ容器と水切り用の30リットルのポリ容器2つに3つの石膏鉢で処理しています。

■ 石膏鉢

石膏鉢

 私の使っている乾燥用の石膏鉢は大きな植木鉢の鋳込み型です。瀬戸に居た折、友人とたまたま通った鋳込み工場の庭に無造作に積んであったものです。「型が痛んで鋳込み作業ではもう使えないけれど欲しいなら持って行きなさい」と無料で頂きました。二人で山分けしました。土の乾燥には十分すぎるほど立派な物でした。焼物の産地に居ると何気なく道を通るだけで良い事があるのですね。

 写真は石膏鉢に土を入れさらしの布を被せ乾しているもの。布があると表面の極端な乾きは止まり塵も入りません。私の仕事場のように猫に乗られても取り合えず大丈夫です

【 3 土練り 】

■ 荒練り

荒練り

 硬めの土と柔らかな土とを混ぜ適度の硬さの粘土にします。硬すぎるときは土を細かくし一旦水に漬けポリバケツに入れ蓋をして一日置いてからします。 仕上がった土は軽く菊練りし暫く寝かします。

 私は篩の150目を通した削り土を極柔らかい状態で荒練り用に保存しています。真空土練機を通した磁器土が硬い時などこの柔らかな磁器土を混ぜ軽く荒練りし菊練りで仕上げます。この作業で削り土を使い切るようにしています。6寸程の小物なら直ぐにロクロ挽き出来ます。

荒練り ビデオ

■ 動画 荒練.wmv

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■ 真空土練機を通した磁器土

 真空土練機を通した磁器土は良く脱泡されていますが土練機のスクリュウ回転で生じた応力を強く内在し、そのままタタラ成形、ロクロ成形すると切れの原因になります。

 それで真空土練機を通した物でも一旦軽く菊練りし、ろくろ上で土ころしをします。その後にろくろ挽きします。菊練りしない時でも必ず土ころしはします。ただ土の捻れが入り組み作業しずらいです。

 菊練りは一方向に捩っていますのでロクロ回転で菊練りの捩れが戻らぬように土を据えれば簡単に土ころし出来ます。

■ 真空土練機

  以前一台ステンレス羽根使用で外装アルミ鋳物の小型の真空土練機を購入しましたが半年でステンレス羽根、軸受けに錆びがしっかりこびり付いていました。ステンレスの加工や価格を考えマルテンサイト系のステンレスにしたと思われます。更に軸受けに接触する内装がアルミ鋳物であり電蝕の問題が大きいです。私のように月に一度使う程度では錆び付きます。分解し錆を取り除きますが暫くするといつの間にか土に異物が紛れ込みの繰り返しで一年で使用を諦めました。

 磁器土で使用する真空土練機は個人の工房では毎日使わないためにかえって腐食の問題が出易く高価で考え物です。

 現在では上質の真空土練機を通し硬さを細かく設定した磁器土が北九州では販売されています。個人工房でも困らないようになっています。

 私の場合は食器制作といっても使用量がしれているのですがネット販売もされている香田陶土さんから送ってもらっています。

■ 菊練り

 細粒の粘土では気泡が抜けづらく切れの原因にもなり荒めの土に比べ丁寧な菊練りが必要です。脱泡された土でも荒練りすれば空気が混入しますので菊練りで仕上げます。私は磁器土では8Kg玉で200回程しています。

■ 作業台

 菊練りは手首に全身の力を載せ行いますので作業代の高さは普通のテーブルより低めです。身長173cmの私で66cmの作業台を使用しています。 無垢板が良いのですが私は24mm厚の耐水合板です。頑丈な木枠の上に上板を乗せているだけで裏表を交換しながら30年近く使っています。

■ 硬い磁器土

 硬すぎたり良く寝かされていない磁器土の菊練りは空気を混入するだけです。下の写真でA、B部に出来る襞が大きく割れパサ付くようなら寝かし直すか、良く寝かした柔らかな粘土を足し柔らかな状態で菊練りします。多少パサ付いても柔らかな状態で菊練りされていれば小物の器なら問題ないです。

 良く寝かされた磁器土でも硬めのものは空気が入りやすいので小さな玉で菊練りします。作業する人の筋力と体重の問題です。壷などは少し硬めで挽いていますので大きな壷では玉を二つ用意しロクロで最初の玉を土ころしした上に次の玉を叩きつけて再度上部を中心に土ころししています

【 4 菊練り-どのように気泡を抜くのか 】

菊練り

 写真でA部に右手、B部に左手を押し当て右手を中心に腰、肩を通し体全体の力で板に粘土を押し当てると同時に僅かに回転軸をずらします。この時左掌親指付け根部を捻り押し当てます。次に粘土を手前に起こします。回転軸がずれていますので、押す動作で粘土のひだが一枚捻れ重なります。押し当て引き戻す作業の繰り返しで土は少しずつ捩れながら回転し脱泡されます。意識的にずらして捻っていくのではなく連続的な動作の中で自然にします。

 回転しながらA、B部の襞で気泡が潰されます。中心の気泡もC部表面に押し出され板に挟まれ脱泡され更にはB部と板に押され脱泡されます。

 AB部先端のD部は移動せず気泡が抜けない事が多いので途中で一度AB部をずらしD部を巻き込み菊練りしておきます。

菊練り  C部が厚い初期状態のまま菊練りを繰り返してもC部中心の気泡は中々抜けませんので右写真のようにAB部の塊を徐々に大きくしC部塊と半々程度で菊練りを暫く繰り返します。この状態の時に気泡は最も効率良く抜けます。C部の土が巻き込まれながらB部と板に押しつぶされ十分に脱泡されたらC部を少しずつ狭めながら菊練りし、し仕上げます。

 AB部の塊が小さな初期段階ではA部に力の中心はありますがC部と半々以上になってからは徐々にB部にも力を移しB部下の粘土の襞を土の動きを利用し擦りつぶすように菊練りします。最終のまとめ段階までB下部の襞が厚くならないよう力をいれ丁寧に菊練りします。襞が厚いままでは効率良い脱泡は出来ません。

動画 菊練り

■ 動画 菊練り.wmv 1MB

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