磁器の制作-「ゼーゲル式」 すくも窯での基礎的な磁器の制作手法

【 ゼーゲル式 】

RO ・ x AL2O3 ・ y SiO2

ゼーゲル式は釉薬の使用原料それぞれの酸化物成分をアルカリの塩基性成分(RO)、アルミナ(AL2O3)の中性成分、珪酸(SiO2)の酸性成分の三種に分類し化学記号の式で簡潔に表したものです。

塩基性成分を合計し1モルのROとし、 RO 1モルに対しそれぞれ x モルの中性成分、y モルの酸性成分と表示します。

焼成での釉薬の反応が化学的なものであるなら原料を重量比で表すのでなく、モル数の比=各酸化物分子の数の比で表示し、より化学的に釉薬を表そうとしたもの。

1モル=6.0×1023個の構成要素数(分子数、原子数)・・・・アボガドロ定数

モル数=質量/分子量(原子量)

ゼーゲル式ではモルの数値は小数点2位程度に抑え簡略に表示します。2位以下を細かく規定しても釉薬の実質に影響しません。

原料の灼滅成分は焼成で無くなり省きます。 

■ ゼーゲル式の利用

ゼーゲル式は焼物の釉薬のみに使われる式で、釉の実質を表すわけではありませんが釉薬原料の構成酸化物を単純な化学式に分類区分けする事で釉薬の基本的な性状の把握、釉薬作り、原料の管理に便利なものです。

釉薬原料に於いて同一性状を持つ原料は多く、一つの釉に対しての組み合わせは多様です。ゼーゲル式では高火度釉での塩基性の化学式はNa2O, K2O, Li2O, CaO, BaO, MgO, ZnO, に絞られ、それらにAL2O3とSiO2の組み合わせに単純化されます。釉の性状を簡潔に表す指針として使われる所以です。

1.塩基成分 RO の組成

Na2O, K2O, Li2O, CaO, BaO, MgO, ZnO, 等で釉の基本性状を決め、溶けやすさ、発色、貫入等に係わり、ROを1モルに設定します。

2.Al2O3とSiO2のモル比を見る事で

RO一定値においてAl2O3とSiO2モル比を段階的に変えると下図のように釉性状は 塩基性釉、カオリンマット釉、光沢釉、乳濁釉と変化します。

基本的なAl2O3-SiO2性状図

基本的なAL2O3-SiO2性状図

● 塩基性釉 アルミナ、カオリンの少ない釉で流動性が高く、焼成温度により透明釉、艶消し釉、結晶釉と変化します。木灰成分の多い調合で得られ不安定ですが複雑な釉調を生みます。

● 透明光沢釉 安定した釉薬で貫入にも強く磁器釉に良く使われます。

● 失透釉 乳濁釉 珪酸の量が多くアルミナに対し珪酸が普通10倍以上の釉

■ 釉薬をミルで均質細粒に調合する釉薬

釉薬をミルで均質細粒に調合する釉薬なら使用原料の構成成分が変わってもゼーゲル式を基に化学成分を合わせたもので焼き上がりにそれほどの問題は起きません。

例えば長石類は名称が同じでも製造元で構成成分に差がありますし、製造ロットでも差があります(成分分析表は製造元より取っておくべきです)。私の使用している磁器釉の範囲内では透明釉やカオリン質、珪酸質マット釉程度でしたらゼーゲル式を同一に押さえれば長石原料をいじっても問題なく使用可能でした。 

■ 微量添加物

微量添加物として加える色素顔料、染料、乳濁材等は少量で色調、釉質が変化しますので詳細が分からぬ時は同一名称でも異なる製造元の原料には注意が必要です。安い原料であったとしても安易に考えると手痛い目にあうものです。

例えば珪酸鉄と表記された原料には数種類のタイプがあり製造元で鉄の含有に差があります。青磁釉等で外割で全体の1%添加する時、実際の添加量は半分の0.5%程になりますが製造元を替えると色調の変化が出易すいものです。

■ カオリン・硅石の等重量ピッチ調整

公開されている釉の調合割合やAl2O3-SiO2性状図を基にピンポイントで成分を決めても思うような釉薬は得られませんので、普通はROを一定値にして近辺のAl2O3-SiO2性状図のテストピースをまず作ります。

硅石成分はほとんどがSiO2であり、等重量づつ加えても同一のモルピッチで増加して行きますが、カオリンは成分的にAl2O3 2SiO2 2H2O でありカオリンを等重量ピッチで加えて行くとSiO2がAl2O3の倍のモルピッチで増加し碁盤目の性状図にならず、並行四辺形になります。

ただ釉性状を見るにはこれで十分ですし計量に時間を取られないので私はこの方法にしています。下図はバリウム釉(RO=0.2KNaO,0.48CaO,0.32BaO)でのAl2O3ーSiO2性状図。青ラインは光沢透明域

AL2O3-SiO2性状図

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